12月12日(土)午前
屋久島高校環境コース研究発表
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屋久島高校・環境コースの生徒は2年生から、屋久島に関するテーマを自分で選び、研究を行ってきました。3年生が研究の成果を発表します。
ウミガメが多く上陸・産卵する謎を探る
市川明馬(屋久島高校)
ウミガメがなぜ永田浜に多く上陸・産卵するのかを調べました。ウミガメはどのような環境を好んでいるのか,様々な浜の砂を集めて,どのような違いがあるのかを比較した結果を発表します。
屋久島町のごみ分別問題を減らすためには
岩川流那(屋久島高校)
私は海岸に海外のごみだけではなく,日本のごみが打ち上げられていることを知って,屋久島町がごみの分別をできているかを知りたくて,この研究をしました。そのことを今回は屋久島町のごみ分別を減らすために行った取組について発表します。
ズーフィコス化石について
川越亘(屋久島高校)
私は,ズーフィコス化石のことを調査しました。ズーフィコス化石の模様や形が気になり,化石の模型を作って検証しました。また,ズーフィコス化石を作ったとされるユムシを飼育して,どのような生態なのかを調べました。今回は,ズーフィコス化石について追究したことを発表します。
小杉谷に関するセミナーが与える影響について
黒飛海太(屋久島高校)
屋久島にかつて存在していた小杉谷集落についてのセミナーが与える影響について調べました。小杉谷集落の林業に関すること以外の学校や集落の様子について調べて,高校生にセミナーで発表することで,小杉谷集落を知ってもらいました。セミナーをとおしてどのような変化が出たのかをまとめ発表します。
ヤクシマカワゴロモについて
塚田翔琉(屋久島高校)
国の天然記念物に指定されたヤクシマカワゴロモの生態を知りたいと思い,研究を始めました。「2年前の5月に起きた大雨の影響で被度が減ったのではないか」という仮説を立て,被度調査や水温や気温,ヤクシマカワゴロモに付着していた砂を調べました。今回は,ヤクシマカワゴロモの現状について発表します。
屋久島民謡『まつばんだ』を後世に伝える方法
寺田雅(屋久島高校)
私たちの先祖が受け継いできた「民謡」という地域文化は,時代とともに失われつつあります。そこで,屋久島の代表的な民謡である『まつばんだ』を後世に伝えていく方法について検討し,実際に行った具体的な方法について発表します。
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12月12日(土)午前
岐阜県立関高校研究発表
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米粉を軸とした地産地消活動の取り組み
石井晶、加藤倫太郎、服部智哉、棚橋望、田中里佳 (関高校2年生)
関高校では、2年生全員が週1回の「総合的な探究の時間」を利用し、「食と農のSDGs」について研究活動を行っています。また、家庭クラブ(2年生全員が加入)の活動として、関市産の米粉の消費拡大をめざす研究を続けています。ふたつともに、自治体やJAなど地域と連携した活動です。
ヒトの子どもとチンパンジーのナッツ割り比較
木村陽向、小森弘貴、岩田悠市、古田萌恵(関高校・自然科学部2年生)
石器を使ってナッツ割りをする野生チンパンジーの話を聞き、ヒトの石器使用とどうちがうのか比較することを思いつきました。研究を進める中でヒトの道具使用の始まりに関するヒントが得られるかもしれないと考えたからです。現在は、さらに縄文人の石器とも比較を行っています。
12月12日(土)午前
こんなことやってます1~屋久島での活動紹介
屋久島産オキナワキノボリトカゲの取説
中間弘(屋久島高校)、屋久島生物部
屋久島には10年ほど前からオキナワキノボリトカゲの国内移入が報告されている。島内在来種への影響が懸念されることから、現在、有志により分布調査と捕獲活動を行っている。今後更に分布域を拡大させないためにも、行政と連携し、島民に向けた啓発活動を拡充したい。
写真が語る「馬毛島」=人も動物も生き生き暮らした島
田中一巳(屋久島町)
強引に進められる馬毛島とその周辺の軍事基地化。写真展を通して、人間の勝手な行為により失われていく自然の姿に警鐘を鳴らし、愚かな流れを止めるきっかけになることを願い、開くことにしました。
環境文化村で開催中の写真展
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12月12日(土)午後
テーマセッション1「越境汚染物質・最前線としての屋久島」
オーガナイザー 永淵修(福岡工業大学環境科学研究所)
環境汚染は人新世の産物である。環境研究では、循環の概念が広く用いられており、特に 生物地球化学的循環は、汚染物質の発生・運命・輸送・沈着等の研究に関連している。 ここでは、汚染物質の屋久島への輸送・沈着・効果を中心にフィールド調査の結果を報告する。
はじめに
大気汚染物質の長距離越境輸送を考える時、その輸送経路と発生源を特定することは極めて重要である。今日、我が国の大気汚染問題では、越境大気の比率の大きいことは周知の事実である。近年、国内の大気汚染の問題が過去の汚染の形態(国内発生の汚染が大部分であった)と大きく異なっているのに旧態依然とした都市域主体のモニタリング体制で推移し、そこで得られたデータを用いて越境輸送分をレセプターモデルで分離しようとしているが、そこには、当然無理が生じる。なぜなら、観測データは信頼性があるが、観測場所に問題がある。つまり、レセプターモデルに使用するデータが大気境界層(地上の影響を受ける層、一般的に1,000m以下)での観測結果であり、国内分と越境分を分離することが極めて困難である。
一方、この越境輸送分をモデルシミュレーションで計算し、示す方法もある。しかし、元来の発生源地域(ここでは中国を示す)のインベントリーデータに不確実性があれば、そこから計算された値にも不確実性が残ることになる。多くの研究者はこのことを理解しながらこのインベントリーを使用している。また、現在の中国国内情勢からは、このインベントリーを改訂できる詳細なデータを得ることは不可能であると考えられる。したがって、国内の影響を受けないモニタリングが絶対に必要であり、山岳(自由対流圏:地上1,000m以上で地表面の影響を受けない)での観測を速やかに始める時期に来ていると考える。なお、自由対流圏の観測では、航空機観測も行われているが、定点観測ができないこと、費用がかかりすぎることが欠点であり、通常のモニタリングとはなりえない。UNEPは大気の越境輸送には、山岳での観測が重要であると強く推奨している。そこで、中国大陸からの気塊が我が国の代表的1000の山岳の山頂付近への到達の程度を検討した。
方法 国内1000山岳の解析は、国土地理院に掲載されている日本の山岳標高から緯度経度と標高を取得した。屋久島の解析は0.01°×0.01°(1 km×1 km)の緯度経度メッシュを作成し、Google APIを用いて標高を取得した。以上の緯度経度標高のデータをもとにRのライブラリーのopenairとNOAAのhysplit4モデルを用いてそれぞれの地点での120時間の後方流跡線解析を行った。滞在時間の解析はFu et al., 2012から、大陸の汚染源であるボックス(38.8N, 43.4N, 125.6W,119.3W)を作成し、流跡線がbox内と通過する滞留時間と滞在高度の計算を行った。また、クリギングはArcGIS 10.4.1を用いて解析を行った。
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12月12日(土)午後
一般口頭発表1 プログラムに 戻る
会員による屋久島での研究成果を発表します。
屋久島のラン科植物は地表と樹上で共生菌が異なるのか?
池山裕一郎 1 、蘭光健人 1, 2 、渡辺侯征 1、池田裕二 3 、手塚賢至4、辻田有紀 1,2 (1 佐賀大学農学部、2 鹿児島大学大学院連合農学研究科, 3 屋久島ラン科植物保全の会, 4 屋久島照葉樹林ネットワーク)
屋久島は日本に自生するラン科植物の約3分の1にあたる108種類が生育する非常に多様性が高い地域である。ランは共生菌からの栄養供給がなければ生育できないという極めて特殊な生態をもつものの、地表で生育する地生種から樹上で生育する着生種まで実に多様な環境に適応している。そこで、地生10種と着生13種を島内にて採集し、DNA情報から共生菌を特定した。その結果、地生種と着生種は共生菌が大きく異なることが明らかになった。
状態空間モデルを用いたヤクシカの個体数推移とパラメータ推定
松田裕之(横浜国大)、柳川桃子(元横浜国大)、西本誠(東京大)、塩谷克典(鹿児島県環境環境技術協会)
捕獲数と糞粒法等による毎年の個体数推定値から個体群動態モデルを考慮して個体数の経年変化と自然増加率等を推定する状態空間モデル(年変動による個体数プロセスを表した状態モデルと観測数と実際の個体数との関係性を式で表した観測モデルで構成)を用いて、ヤクシカの個体数変動を推定した。状態空間モデルによる初年度個体数は糞粒法による推定値の0.9倍(95%信用区間で0.70~1.39倍)と推定された。屋久島全体での各年自然増加数はここ数年で減少傾向にあるが、それとともに捕獲数も減少しており、年に5000頭程捕獲しなければ減少しないことが示唆された。
屋久島西部地域での自動撮影カメラ調査による哺乳動物相の把握
平木雅,池田裕二,水川真希,木滑黄平,丸之内美恵子(屋久島自然保護官事務所)
屋久島の西部地域において,ヤクシカ管理を目的とした自動撮影カメラ調査を行っている。自動撮影カメラは,野生動物の生息分布や行動,日周活動性の調査等に活用されており,屋久島においても奥岳地域や西部地域等,様々な地域で活用されている。本発表では,2019年12月から2020年2月に西部地域に設置された35台の自動撮影カメラの撮影データを分析し,西部地域で確認された哺乳動物相について報告を行う。
屋久島、綾、只見のユネスコエコパークを比較して
戸田恵美(無所属)、加藤和弘(放送大学)、古市剛史(京都大学)
ユネスコエコパークという自然保護・保全のシステムが、地域住民にどのように認識されているのか明らかにすることを目的とした。聞き取り調査は単独自治体が主体である地域から、屋久島・口永良部島、綾、只見を選択して行い、結果を分析した。経済動向、人口動態、歴史・文化によってその理念の受け取り方も対する期待も異なっていたが、どの地域でもユネスコエコパークは自然保護、学術・教育を語る人に語られる傾向が強かった。
1950年代屋久島における野生動物と猟師の関係―川村俊蔵博士の野帳分析からわかったこと
服部志帆〈天理大学) 小泉都(京都大学・学術研究支援室〉
日本の霊長類学の創始者のひとりである川村俊蔵博士(1927~2003年)は、伊谷純一郎博士とともに1952年と1953年に屋久島で調査地開拓のために予備調査を行った。合計43日の間、合計36人(猟師26人)に聞き取り調査を行った。西部に位置する永田の猟師や屋久島全域に詳しい安房の猟師などを対象に、サル、シカ、狩猟法、狩猟域、利用法、伝承、地名など多岐にわたる情報を聞き取っている。これらの情報は野帳8冊と日記1冊に記載されており、5万6千字をこえる。2013年から始めたノートの復刻と分析は困難を極めたが、ようやくその全容の大半が明らかとなった。本発表では、分析を終えたノートの内容をもとに、1950年代屋久島における野生動物と猟師の関係の全体像について紹介したい。
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こんなことやっています2/京大・野生動物研究センター 共同利用研究会
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屋久島で行っている、現在進行中の研究をご紹介します。今年から調査を始めた大学院生の方に、取り組んでいる研究を紹介していただきます。なお、このセッションは、京都大学野生動物研究センターの共同利用研究会を兼ねています。
屋久島のニホンザル(Macaca fuscata yakui)における コドモの遊びの量の群間比較
中塚雅賀(京都大学・理学研究科)
現在、屋久島で調査を実施している研究の計画内容と進捗を発表する。本研究では、屋久島に生息するニホンザルの2つの群れを対象にコドモの遊びの量を比較する。群れ内の年齢別のコドモの数や性比といった情報や、実際に誰と遊んでいるのかというデータから社会的要因、どこを遊動して何を食べているのかというデータから生態的要因、をそれぞれ考慮し、これら2つの要因からコドモの遊びの量を検討する。
屋久島におけるサイズの異なる隣接群間でのオスの社会関係の比較
大橋篤(京都大学・理学研究科)
本研究では、屋久島においてサイズの異なる、ニホンザル(Macaca Fuscata)の群れの親和的交渉・攻撃的交渉を含めたオスの社会関係を比較する。霊長類では種内変異があることが報告されており、ニホンザルでは金華山や屋久島、その他の生息地間で比較研究がなされている。しかし、屋久島内にも社会性比や群れサイズが異なる群れが見られ、これらを比較することでオスの社会関係が何の要因によって変化するのかを解明できるのではないだろうか。
屋久島におけるニホンザルの農作物被害
大坂桃子(京都大学・アジア・アフリカ地域研究研究科)
ニホンザルによる被害は、日本全国で1980年代から顕在化し、現在も問題となっている。屋久島でも柑橘類を中心とした被害が出ているが、そのようなサルの保全・管理に関する研究は少ない。発表者は、2020年11月からサルの被害に関する長期フィールド調査を開始した。本発表では、ここまでの調査内容をまとめ、今後の研究の展望とともに、屋久島におけるサルの保全・管理について考えたい。
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一般口頭発表2/京大・野生動物研究センター 共同利用研究会 プログラムに 戻る
屋久島で京都大学野生動物研究センターの共同利用研究として行った研究成果をご紹介します。なお、このセッションは、京都大学野生動物研究センターの共同利用研究会を兼ねています。
屋久島のニホンザルの全島分布と管理への提言
半谷吾郎(京都大学)
2017年と2018年の5月に、屋久島各地の林道や農道を歩いて、サルの糞を探す調査を行った。総距離は165.4kmで、842個の糞を発見した。全島的な傾向として、集落や畑のすぐ近くでは糞が見つからなかった。それに加え、北部および東部では、有害鳥獣捕獲が行われている民有地で糞が見つからず、国有林でのみ糞が見つかった。一方、同じく捕獲が行われている南部では、民有地でも糞の発見があった。この結果を、1990年代に海岸部を中心に屋久島全体で行われた分布調査の結果と比較すると、西部、南部の低地、および高標高地では、かつてサルが分布していたところに、今も同じようにサル糞が発見されたが、北部の低地では、かつてサルが頻繁に発見された場所で、今はサル糞が発見されていなかった。これらの結果をもとに、屋久島のニホンザルの管理について提言を行う。
調査チーム
屋久島で農業被害を軽減するためのヒヨドリ警報の開発
持田浩治(京都大学)西川真理(東京大学)揚妻-柳原芳美(WDサイエンス工房) 揚妻直樹(北海道大学)
ヒヨドリは、屋久島の森林生態系における主要な種子散布者であると同時に、柑橘類に対する農害鳥獣としての側面をもつ。そのため、安易な駆除はヒヨドリだけでなく屋久島の森林生態系に影響を与えると考えられる。一方、駆除を行わない果実袋を利用した対策は、被害削減に効果を発揮するが、その取り付け作業は農家にとって負担となる。本研究は、屋久島南部の果樹園をモデルに、農家のヒヨドリ対策の負担軽減の可能性を探った。
屋久島西部・世界遺産地域で起きたヤクシカの減少:自然生態系による制御の可能性
揚妻直樹(北大FSC)、揚妻-柳原芳美(Waku Dokiサイエンス工房)、杉浦秀樹(京大WRC)
捕獲圧がかけられていない屋久島西部・世界遺産地域のヤクシカ個体群を2001年より毎年調査した。生息密度は当初は年率9%で増加していたものの、2014年以降は年率マイマス15%で急速に減少していた。シカの地域外への移出率は最大に見積もっても年率3.5%であったことから、地域内での死亡増加が密度低下を引き起こしたと考えられた。世界遺産地域のシカ個体群では自然生態系による調節が効いている可能性が示唆された。
ウミガメの背中に生息する生き物たち
林亮太(日本工営(株))
屋久島は北太平洋最大のアカウミガメの産卵地として知られ、毎年多くのウミガメが産卵のために上陸してくるが、これらのウミガメの体表にも多くの生物が生息していることはあまり知られていない。屋久島のアカウミガメからは、フジツボ類をはじめ、新種の生物2種を含む様々な生物が採集された。本講演では、主に永田前浜・四ツ瀬浜で行った付着生物調査で得られた生物たちを紹介する。
屋久島の森林の特徴:九州南部・奄美・沖縄との比較
相場慎一郎(北海道大学・大学院地球環境科学研究院)
直径5cm以上の樹木を対象にした毎木調査データに基づき、九州南部・屋久島・奄美群島・沖縄島の森林を比較し、気候と地史が屋久島の森林の種組成と多様性に影響を与えていることを明らかにした。
屋久島の垂直分布(照葉樹林と針葉樹林の移行部)
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テーマセッション2「屋久島の植物多様性:最新の研究成果から」
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オーガナイザー 矢原 徹一(九州オープンユニバーシティ研究部長)
屋久島には約80分類群(約50種+約30変種)の固有植物が知られており、植物相の固有性がきわめて高い。これらに加え、屋久島以外には少数の自生地しかない準固有植物や、日本では屋久島にしか自生しない希少植物がある。今回のテーマセッションでは、これらの固有植物・希少植物の分類・生態・進化に関する最新の研究成果を紹介する。
屋久島のシダ植物の多様性
海老原淳(国立科学博物館・植物研究部)
面積当たりのシダ植物の種多様性が日本で最も高い地域である屋久島の山地であるが、近年では自生が確認できない種や、生物学的な実体が把握できていない種も少なくない。近年の研究から明らかになった屋久島産シダに関する新知見と、未だ残されている分類学的課題、さらには筑波実験植物園で行っている希少シダの増殖の取り組みについて紹介する。
屋久島の従属栄養植物の多様性
末次健司(神戸大学・理学部)
皆さんは「植物の特徴は?」と聞かれた場合,どのように答えるでしょうか.多くの人が「光合成を行うこと」を挙げるのではないでしょうか.しかし,植物の中には光合成をやめ,他の植物やキノコから養分を略奪して生きているものが存在します.
本講演では,近年に屋久島で発見された新種の光合成をやめた植物を中心に,その不思議な生き様をご紹介したいと思います.
チャルメルソウ属・カンアオイ属から見た屋久島
奥山雄大(国立科学博物館・植物研究部)
チャルメルソウ属およびカンアオイ属は、日本で著しい多様化を遂げた植物として特筆に値する。屋久島にはチャルメルソウ属の固有種としてヒメチャルメルソウ、カンアオイ属の固有種としてヤクシマアオイ及びクワイバカンアオイが知られているが、近年、周辺地域からこれら屋久島固有種の進化を考える上で重要な新種の発見があった。本発表では屋久島固有種とこれらの新種を含む近縁種との比較研究がもたらした最新知見を紹介する。
ヒメチャルメルソウ
新たに発見された屋久島固有植物
矢原徹一、布施健吾、佐藤正行(九州オープンユニバーシティ)、廣田峻(東北大)、陶山佳久(東北大)
屋久島は今なお新種が見つかる島です。私たちの講演では①アジサイ属・②タネツケバナ属・③トウバナ属の新種と④ハコベ属の新変種について報告します。①と②は2004-2006年の調査時に発見したものですが、分類がむつかしい属のため、新種かどうか確定できませんでした。今回、MIG-seqという技術を用いて新種である証拠を得ました。③と④は今年の調査で新たに発見されました。これらの系統関係をもとに屋久島の植物の由来について考えます。
ミズサキガラシ
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屋久島照葉樹林ネットワークからの報告
手塚賢至(屋久島照葉樹林ネットワーク)
屋久島照葉樹林ネットワークでは4月10日付けで、日本生態学会、日本植物分類学会、日本自然保護協会と合同で、屋久島の中でも新種発見が相次ぎ、生物多様性豊かな森である低地の照葉樹林を守るよう、環境省、林野庁、鹿児島県、屋久島町に要望書を提出しました。その後の経過を報告します。
サルは森の壊し屋?:見逃されてきたサルと枯死木の関わり
栗原洋介(静岡大学)
枯死木は森林において養分を蓄えたり生物にすみかを提供したりする重要な役割をもちます。死んだ木は真菌や昆虫によってゆっくり分解されるのですが、屋久島・西部林道ではサルが昆虫を食べるためにばきばきと派手に枯死木を壊します。しかしサルのような大きい生物が枯死木とどのような関わりをもつのかは不明です。今回は、サルの行動が枯死木分解にあたえる影響を解明するために行っている、枯死木放置実験について紹介します。
体温調節が群れ内での凝集性、身体・音声コミュニケーションと群れの遊動に与える影響
田伏良幸(京都大学・理学研究科)
集団を形成する種は、捕食者や採食環境に応じて凝集性が変化する。実際、捕食者のいないニホンザルでは、採食環境に応じて休息時の凝集性が変化する。体温調節は、野生下では生存に大きく影響するため、体温調節も凝集性に与える影響は大きいはずである。一般的に、動物は体温調節するとき、日影や洞穴など場所の選好性がある。この場所選好性と身体・音声コミュニケーションや群れの遊動との関連について解明しようとしている。
屋久島のサル、シカ、イタチの同所的進化をゲノムから探る
早川卓志(北海道大学・地球環境科学研究院)
屋久島には中大型哺乳類として、ヤクシマザル、ヤクシカ、コイタチのみが太古から生息する。なぜ、サル、シカ、イタチだけが繁栄できたのだろうか。屋久島の生態系は、およそ10万年前に本島から分断され、マグマ溜りからの火砕流などの影響を受けて確立した。その過程で、サル、シカ、イタチの個体群が、どのように姿を変え、個体数を増やし、あるいは減らしたかを、3種同時のゲノム解析を通じて明らかにしてみたい。
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