第11回大会テーマセッション1「屋久杉の謎を追って」

壮大な景観を呈する屋久杉の森は、登録30周年を迎えた世界自然遺産・屋久島の顕著な普遍的価値(OUV)のひとつです。また、屋久杉はかつては木材資源として、そして近年は観光資源などとして島の人々の暮らしを支えてきた側面もあります。屋久杉に関する研究や理解はこれまでにも積み上げられてきましたが、いまだに謎は多く、新しい発見や新しい利用の考え方などが次々と生まれてきています。このテーマセッションでは、既往の研究成果の簡単な紹介を行ったのちにそれらの新しい情報を提供し、屋久杉に関する理解の深化と今後の利活用に向けた議論の開始に繋げていきたいと考えています。

日時

2023年12月16日(土)(大会第1日) 13:30-16:30

講演内容

高嶋 敦史(琉球大学農学部与那フィールド)
「長期モニタリングに基づくヤクスギ林の基本的特徴」

吉田 茂二郎(九州大学総合研究博物館)
「ヤクスギの円板は我々に何を教えてくれるのか」

津村 義彦 (筑波大学生命環境系)
「ヤクスギの遺伝的解析から得られた知見」

古市 真二郎 (屋久島森林生態系保全センター)
「屋久杉巨樹・著名木調査の取組紹介」

小原 比呂志 (一般社団法人屋久島アカデミー代表理事、岡山理科大非常勤講師)
「屋久島の巨木分布の概観と、全国のスギ天然林エコツーリズム」

高嶋 敦史
 琉球大学農学部附属亜熱帯フィールド科学教育研究センター助教。世界自然遺産に登録された沖縄島北部に位置する演習林(与那フィールド)に勤務している。九州大学在学中の2001年よりヤクスギ林内に設定された固定試験地の継続調査に関わり、過去の伐採活動やその後の再生・遷移の様子などを紐解く研究に取り組んでいる。

吉田 茂二郎
1953年福岡県生まれ。製材所であった母の実家で10歳まで、木材と山に接しながら育つ。大学は農学部林学科へ進学・卒業した。修士修了後に鹿児島大学に勤務する。森林計測・計画学を専門として、九州管内の天然林(屋久島ヤクスギ天然林、霧島モミ・ツガ天然林)の取り扱いについて研究をした。2019年に退職し、現在に至っている。

津村 義彦
筑波大学生命環境系教授、山岳科学センター長。筑波大学農林学系助手、森林総合研究所研究員、室長、領域長を経て現在に至る。専門は森林遺伝学、分子生態学で遺伝的手法を用いて日本や東南アジアの森林の形成過程や持続的林業の研究を行っている。

古市 真二郎
1962 年生まれ。種子島・屋久島在住。屋久島森林生態系保全センター行政専門員(月~水勤務)。

小原 比呂志
1962北海道生まれ。1984鹿児島大学水産学部卒業。屋久島野外活動総合センター(YNAC)を設立し、30年間にわたり屋久島のエコツアーを企画展開する。2005年環境省日本エコツーリズム大賞「特別賞」受賞。2016~2019 NHK『伝説の超巨大杉を追う』『ダーウィンが来た!』に巨大杉捜索隊長として、2023『ブラタモリ』案内人として出演。2022年一般社団法人屋久島アカデミーを設立し、屋久島を島民と来島者とで楽しく学ぶ「屋久島大学プロジェクト」を運営し、地元行政機関等と協力して屋久島ガイドの養成にも携わる。著作に「屋久島学 屋久島公認ガイド読本(分担執筆)」「屋久島野外博物館フィールドガイドブック(分担執筆)」などがある。