日時:2026年7月29日(水)20:00-21:30
会場:オンライン
講演者:永淵修(福岡工業大学)
屋久島北部を流れる一湊川には、世界で唯一、ヤクシマカワゴロモが自生しています。この自生地が「ヤクシマカワゴロモ生育地」として、国指定の天然記念物に指定されています(文化庁、2010)。また、ヤクシマカワゴロモは、すでに1954年には鹿児島県の天然記念物に指定され、環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠB類にも指定されている極めて希少な水生植物です。さらに、一湊川は環境省の「重要湿地」および「重要生息地」にも指定されています。このように一湊川は、法律や制度の枠組で二重三重に守られています。しかし近年、流域の攪乱によりヤクシマカワゴロモの衰退が確認され、その保全が重要な課題となっています。
本講演では、これまで我々(研究室、共同研究)が実施してきた流域調査、河床環境調査および生育環境調査の成果をもとに、ヤクシマカワゴロモが衰退するまでの一連の環境変化について紹介します。具体的には、降雨時の微細土砂流出、河床への浮泥堆積、浮泥からの栄養塩供給、付着藻類の繁茂、そしてヤクシマカワゴロモの生育環境悪化へと至る「流域―河床―生物」を結ぶ衰退機構について解説します。
さらに、散乱光透過率、河川流速、浮泥、付着藻類などの調査結果から、ヤクシマカワゴロモの生育を支える「環境閾値」を定量的に整理し、世界で唯一の一湊川生態系を将来にわたって保全するために必要な管理目標について提案します。
現在、一湊川流域では河川管理や新たな砂防ダム工事対策など様々な課題が議論されています。本講演では、科学的調査結果をもとに、一湊川の自然環境をどのように評価し、どのような視点で保全を進めるべきかについて、研究者だけでなく地域住民や行政担当者の皆様とともに考える機会としたいと思います。
ヤクシマカワゴロモの生息地である一湊川(写真提供:半谷吾郎)


