5.18豪雨における山岳残留事故を検証する ―未来のために経験を生かす―

テーマセッション2
オーガナイザー 小原 比呂志 (屋久島学ソサエティ理事)
司会 湯本貴和 (屋久島学ソサエティ会長)

2019年5月18日、屋久島山中で1日に1000ミリを超える豪雨が降り、県道ヤクスギランド線が崩壊、ヤクスギランドに15人?、荒川登山口に300人を超える人数が閉じ込められるという事態となった。その様子はSNSやマスコミを通じて伝えられ、全国的に発信され、さまざまな影響を残した。
 このセッションでは今回の尾立岳南斜面崩壊のメカニズムを踏まえて、当日の入山判断の多様なあり方、ガイドと登山者が直面した縄文杉荒川登山ルートの状況と現場対応、一般観光客が立ち往生したヤクスギランドの現場対応、当日出動なしのガイドたちの麓での動き、対策本部・救助側の町、消防、警察、自衛隊の対応と連携状況などを検証し、この事例を礎として今後に向けてあるべき災害対策と対応システムなどをめぐる、災害マニュアルの検討をする。

<基調講演1> 
「 山地崩壊と地質・植生との関係 」
黒川 潮(くろかわ うしお)(森林総合研究所 山地防災研究グループ長)

 2019年5月18日に発生した豪雨を受け、被害状況の把握及び対策の検討のため6月10~12日に現地調査を実施した。その結果最も崩壊面積の大きい箇所については、樹木根系の効果が及ばない深層崩壊が発生したものと考えられる。また県道屋久島公園安房線沿いで発生した山腹崩壊については花崗岩および風化した真砂土が混じり、コアストーンも確認できた。崩壊深は比較的浅く現象としては表層崩壊と考えられる。

黒川 潮 (プロフィール)
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所九州支所山地防災研究グループ長。1996年農林水産省森林総合研究所入所。(独)森林総合研究所、(独)森林総合研究所関西支所、(独)森林総合研究所九州支所を経て現職。専門分野は治山工学、山地防災工学で、森林の持つ防災機能に関する研究に携わる。

<基調講演2>
「時系列状況報告、及びその後話し合って決めた今後のガイドツアー催行基準」
中馬 慎一郎 (屋久島観光協会ガイド部会長)

 令和元年5月18日に発生した局地的な豪雨により、県道ヤクスギランド線・荒川三叉路付近の崩落、そして荒川登山口やヤクスギランド、また路上途中のバス車内に300名以上の方が下山できず閉じ込められた事態となった。その中にいた山岳ガイド30名が連携して一般の登山者までをサポートした。警察、消防、役場、自衛隊等関係機関の尽力により大きな負傷者を出すことなかった。 しかし一歩間違えれば、より深刻な大惨事になっていたとも考えられる災害であった。本日はその現場等で様々な方々が体験したこの災害の教訓を色んな角度で検証検討し、そこから得られる新たな知識や学びを皆様と共有して、今後のよりよい防災対策、安全登山に繋げていきたいと考えるための検証会としたい。

中馬慎一郎(プロフィール)
屋久島観光協会ガイド部会長 観光協会代表理事
Outdoor Guide SDS (志戸子ダイビングサービス)代表 
屋久島観光協会ガイド部会長(2016~)
屋久島町消防団水難救助隊隊長

<会場とのディスカッション>
司会:湯本 貴和 (屋久島学ソサエティ会長)
登壇者;満園 茂(屋久島観光協会理事)、黒川 潮、中馬慎一郎、屋久島町役場総務課